映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の評価と感想レビュー

大岡大介
大岡大介
投稿日:2022/01/08 01:43
★★★
★★★

しんどかった。

個人的には乗り切れなかったな。スウィンギング・ロンドンと聞くと、やはり華やかな表舞台を見たい知りたい。せっかくならホラーじゃなくてファンタジーの方に振れなかったのかな。主人公エルとその母のエピソードも効いてない。

母のことでエルの力が身についているなら、母とエルで直接時代をつながせて、時代を行ったり来たりして母の遺恨を解きながら、ソーホーからスウィンギング・ロンドンにファッションデビューを果たす…なんて仕上がりでもイケたはずだ。ショービジネスに食い物にされる女子の怨恨…男性原理社会への怨念というテーマなら、もっと他に描きようがあるのではと思う。映画そのものが技術的にしっかり組みあがっているだけに「なんでこの組み合わせにしたんだろ」というもったいなさが大きいのだ。

冒頭のダンス、そのときの衣装は良かったね。でもエドガー・ライトのいつもの「クスクス」とか「切なさ」とか「愛すべき情けなさ」とかは無い。ただサンディの絶望とエルの恐怖が大きいだけで、ホラーと言ってもその源をぶっ倒すカタルシスも無い。ただダークでしんどかった。

とはいえ、撮影や舞台の仕立てを見るに、一流の技巧が集められて仕上げられていることに間違いは無い。やっぱり「おれが手がける物語は面白い」と信じ込み、他者を恐れずに巻き込んで進むことが「作る・仕上げる」には一番大事なメンタルなんだろう。次は明るいの観たいよ。