映画『ブレット・トレイン』の評価と感想レビュー

大岡大介
大岡大介
投稿日:2022/09/14 18:04
★★★★
★★★★

肩の力も抜けた殺し屋の人生。

「これをハリウッドに持っていこう」と決めたエージェントのお二人も、それを快く受け入れて任せた原作者も揃って慧眼だった。確信犯と呼んで良い「架空ニッポン」はコテコテで、出演者も作り手も心の底から面白がりまくっているのが伝わってくる。

毎度同じこと言ってるけどやっぱり「物語の8割はキャラクター」。彼らが過ごしてきた人生を、セラピストからの受け売りの人生ハックや「きかんしゃトーマス」キャラハメ分析、ひいては過去の抗争や花嫁の死まで振り返らせて情報過多なまでにべったり説明して「コイツはここにいて奴を殺す理由がある」ということをしっかり分からせてからアクションになだれ込む。その「説明描写」までもがサービスに満ちているから退屈しない。

未だに「ハリウッドが描く日本は間違っている」という評もあるけれど、おれたちが受け入れている海外からの風習やスタイルや言葉の数々まで、自分たちが消化しやすいように消化しているわけで、お互い様なんじゃないのと思ったりもする。少なくとも今回の映画で「日本や日本文化を揶揄されている」ような感じは一切受けなかった。

アクション映画って「◯◯というミッションを完遂する」という一本線が基本だけど、ミッションの裏側を垣間見たり、変な奴に出会ったりして「とりあえずサバイブする」ほうになだれ込んでしまう感じも個人的には大好きだ。物語を描く際に「いかに主人公を理不尽なピンチに追い詰めるか」が大事。この映画はその上に「こんな大スペクタクルも人生のひとコマにしちゃうのね」という突き放した抜け感があって素敵だ。この年齢のブラピだからこそハマった抜け感なんだろうな。きっと他の役者じゃこうはならなかった。

よく考えたら、集まった面々全員「殺し屋」で悪者だ。撃たれようが斬られようが「あっちの世界」の話になっちゃってる。これって現代ハリウッドのポリコレに沿ってるってことなのかな??観てる間は気づかなかったけど。 アクションもバイオレンスも見てみたいしなんならやってみたいと思う欲求は自然なもので、それを映画が今後も肩代わりしてくれれば良いと思うんだけど、今後はこの方向が主になっていくのかな。善人が巻き込まれるのでなくて悪人同士が殺し合うって方向に。まあ面白けりゃいいんだけど。